求人の募集要項で、よく「社保完備」という表記を見かけますよね。
これって本当のところどういう意味なんでしょうか?
そもそも看護師に限った話ではありませんが、雇用形態は大きく分けて3つあります。
お子さんがまだ小さかったり、自分の時間も大切にしながら働きたいという場合には、「非常勤」いわゆるパートの雇用形態を選択肢として検討する方も多いことでしょう。
とはいえ、たとえ常勤でなくとも、安心して働いていくためには、自分が病気をした時や、万が一退職しなければならなくなった時、金銭的にサポートしてもらえる制度が完備されていることが望ましいですよね。
そんな時重要になってくるのが、職場に社会保険制度が完備されているか否かなのです。
ここで本題ですが、パートなどの非常勤や派遣の看護師の場合でも、社会保険の恩恵は受けられるのでしょうか?
常勤と比較すれば勤務時間は少ないものの、特に看護師の場合、専門職としてほぼ同じ内容の仕事をするわけです。
社会保険がしっかりしている職場を選びたいですよね。
そこで今回は、看護師の社会保険制度について解説していきます。
それではさっそく見ていきましょう!
1 社会保険とは?
そもそも「社会保険」とは何なのでしょうか?
一般的に「社会保険」とは、異なる公的保険制度の総称で、病気やケガなどの事故等に備え、公的な援助を受けられる制度です。
次のように整理することができます。
常勤看護師は、通常5つの制度すべてに加入することになりますが、非常勤の場合には、勤務時間などによって加入できるか異なってきます。
以下、具体的に各制度を見ていきましょう。
1-1 健康保険(医療保険)
病気になった時は、病院に行き、診察を受け、薬局で処方薬を出してもらいますよね。
多くの人は、保険証を医療機関等に提示することで保険が適用され、医療費は3割の自己負担で済んでいます。
これが「健康保険(医療保険)」で、すべての国民が何らかの医療保険に加入して、お互いの医療費を支え合っています。
国民健康保険法によれば、日本の公的医療保険は以下の6つです。
会社に勤める方や日雇い労働者の方などは、
「健康保険組合」または「全国健康保険協会」に加入します。
一方、自営業者などは、
「国民健康保険」に加入することになります。
パート看護師の医療保険への加入も、大きく上記2者に分かれることでしょう。
「国民健康保険」には、被保険者という概念がなく、前年の所得に応じて世帯単位で保険料が算出され、世帯全員に保険料が発生します。
これに対して、雇用主が加入する「健康保険」は、給与額に応じた標準報酬月額に基づいて算出された保険料を事業主と従業員が折半して支払います。
つまり、同じ3割負担であっても、どの保険に加入しているかで毎月支払う保険料は全く異なるということになります。
さらに、病気で働けなくなった時の「傷病手当金」や、産休中や出産時の「出産手当金」の支給は、「国民健康保険」にはありません。
万が一の場合の保障は、雇用主が加入する「健康保険」に大きなメリットがあることがわかります。
ただし、雇用主が加入する「健康保険」に加入するか、「国民健康保険」に加入するかは、原則として働く側が任意に選択できることではありません。
雇用主が加入する「健康保険」の加入条件を満たさない場合に、「国民健康保険」に加入するか、「配偶者等が加入する健康保険の被扶養者」となるかは選択の余地がありますが、また記事を改めて解説します。
1-2 厚生年金
20歳になると国民年金に加入しますが、それだけでは実は、老後の生活はかなり厳しいものになります。
厚生年金とは、簡単に言えば国民年金に上乗せしてもらえる年金です。
厚生年金は職場も一部費用を負担するため、全部自分で上乗せして積み立てていく(国民年金基金など)よりも安く、支給される年金額を高くしていくことができます。
その他、障害年金や遺族年金といった、もしもの時の制度も厚生年金制度によって保障されますので、厚生年金に加入しているほうが手厚い保障を受けられるということになります。
1-3 介護保険
介護保険料の支払開始時期は40歳です。
加入している医療保険によって納付すべき介護保険料は異なります。
勤務先で社会保険制度が完備されていれば、給与から天引きされることになり納付の手間がありません。
国民健康保険に加入していれば、お住まいの市区町村から送付される納付書等で納付することになります。
1-4 その他:労災保険と雇用保険
「社会保険」として大きなもの(狭義のもの)はこれまで見てきた3つです。
前述したように、仕事中に怪我をした場合に支払われる「労災保険」や、失業時に再就職先が見つかるまで支給される「雇用保険」も、広義の社会保険です。
労災保険は、全ての労働者が加入対象となります。
仕事中に起きた事故やケガに対する補償をするものですから当然ですよね。
なお、労災保険は法人や事業主が全額負担するため、働く側が保険料を負担することは一切ありません。
雇用保険は、労働者が2つの加入条件を満たす場合、勤務先の業種ないし規模を問わず、加入させることが義務付けられています。
- 31日以上継続して雇用される見込みであること
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
雇用保険の保険料は、雇用主と使用者とで折半して負担します。使用者の負担分は給与から天引きされるのが一般的でしょう。
また、雇用保険に加入した場合は、「雇用保険被保険者証」が発行されます。
紛失等を防ぐため、雇用主において管理し、退職時に使用者に交付して返還することが多いようです。
現在医療機関などに勤務していて退職を検討している方は、各種給付を受給する場合や再就職するときに必要になりますので、覚えておきましょう。
2 社会保険制度に加入するメリット
社会保険制度があると、上述したように様々な場面で給付を受けられるというメリットがありますが、最大のメリットは次の2つでしょう。
基本は折半ですが、3分の2以上を負担してくれる職場もあるようです。
3 社会保険が整備された職場
社会保険制度を整備しなくてはいけない職場とは、基本的には、
ということになります。
社会保険は労働者を守るための制度です。
つまり、職場の義務でもあって、勤める病院などがコンプライアンスを遵守しているかにも直結する重要なポイントになるでしょう。
4 クリニックと社会保険
4-1 すべてのクリニックが社保完備ではない
問題になるのは、クリニックなどの小規模事業所への適用です。
たとえば厚生年金制度が適用となるのは、次のようなクリニックです。
「常時5人以上」とは、「常勤従業員」と「常勤従業員の4分の3以上勤務する従業員」を計上して判定します。
事業所として厚生年金制度の適用がない場合でも、クリニックの事業主(院長)が、いわゆる「医師国保」に加入している場合、一定の条件を満たす従業員を、その准組合員として加入させることもできます。
4-2 社保完備クリニックでも加入できない場合がある
たとえ社会保険完備の職場であっても、そこで働く従業員の全てが、社会保険に加入できるわけではありません。
パートや派遣看護師の場合、主に、
に応じて社会保険に加入できるかどうか変わってくるので、十分な注意が必要です。
さらに具体的に見ていきましょう。
4-3 クリニックにおける健康保険、厚生年金、介護保険への加入条件
前提として、
されているという点は法定されているので絶対条件です。
イベントに単発で看護師の仕事をした場合や、数週間の短期アルバイトでは加入することができません。
このほかに注意しておきたい条件が「4分の3基準」です。
したがって、週2~3日のパートだと、おそらく加入ができず、週4~5日のパートだと、勤務時間によるというような具合でしょうか。
5 まとめ:意見と提案
これまで見てきたように、社会保険制度が適用される職場で働くことには様々なメリットがあって、できることならしっかりと整備された職場を探したいところです。
また、「その勤務先が社会保険整備の条件を満たすのか」という点だけでなく、「自分の労働時間等が社会保険加入の条件を満たすのか」という点も、就職・転職活動を始めるに当たって十分に確認しておく必要があります。
パート看護師として、自分の時間を確保しながらもしっかりとした保障のある職場で働きたいと考えている人は、社会保険制度も十分意識して勤務先を探すと良いでしょう。
以下の記事で、パート看護師として働くメリットとデメリットや常勤との比較も解説していますので、ぜひあわせてお読みください。
皆さんにとって本当に働きやすい職場が見つかることを祈っています。