「人生100年時代」が到来し、老後は長期化しています。
他業種に比べ、私たち看護師の給料が高いとはいえ、ライフステージの変化によって、職場や働き方を変更すべきか悩む場面に直面することは誰でも避けられません。
転職を繰り返したり、パートなどの働き方を選択することになれば、60歳を迎えても退職金支給の保障はなく、その後の生活資金が足りない!なんてことにもなりかねません。
私たち看護師こそ、受給予定の公的年金の状況も踏まえて、老後の資金についてしっかりと考えておく必要があるのです!
看護師こそ、受給予定の公的年金の状況も踏まえて、老後の資金についてしっかりと考えておく必要があるのです!
「iDeCo(イデコ)」は、自分が拠出した掛金を、自分で運用し、資産を形成する年金制度です。
金融庁は、2025年度税制改正で、iDeCo(イデコ)の拡充を要望することが話題になっていますね。
これは、加入者が拠出する掛け金の全額を、課税所得から差し引いて所得税を優遇する仕組みを維持した上で、掛け金の上限引き上げを求めるものです。
老後の資産形成を後押しする狙いがあり、具体的にどのように拡充がなされるのか、期待できそうですね。
さて、最大のメリットとして、以下に記載した3つの税制優遇を受けられるのが特徴です。
金融機関や証券会社のサイトでしきりに薦められてはいますが、自分にマッチしているのかどうか、いまいち判断が難しいですよね。
そこで、本記事では、メリットに隠れて見落としがちなiDeCo(イデコ)のデメリットに焦点を当て、わかりやすくまとめた上で、向いている人向いていない人についても解説していきます。
それではさっそく見ていきましょう!
1 iDeCo(イデコ)のデメリット6つ
まずは結論として、iDeCo(イデコ)のデメリットを整理しました。
それぞれ詳しく見てみましょう。
1-1 掛金は原則として60歳まで引き出せない
iDeCo(イデコ)の掛金は、老齢給付金として受け取ることを目的としているため、原則として60歳まで引き出せません。
また、60歳で引き出す場合も、10年以上加入していることが条件です。
厳しい要件のもと、iDeCo(イデコ)を脱退して一時金を受け取ることができる場合もありますが、よほどの場合でない限り、60歳までは引き出せないと考えていた方がいいでしょう。
1-2 自分で金融機関を選んで手続きしなくてはならない
iDeCo(イデコ)は自分で金融機関を選んで口座開設手続きを行い、自分で運用する商品を選ばなくてはなりません。
また、金融機関を選ぶ際は、運用を希望する商品の取り扱いがあるかどうか、よく確認する必要があります。
自分で行わなくてはならない手続きが多く、かなり煩雑なこともデメリットといえるでしょう。
1-3 運用商品は元本割れのリスクがある
運用する金融商品の選定によっては、支払った掛金の合計よりも、老後の年金給付額が下回る可能性があります。
選定した商品である投資信託の運用成果は、市場の状況などによって常に変動するものだからです。
運用は自己責任であり、仮に損失が出たとしても補償はありません。
ただし、元本確保型のリスクの低い商品もあります。この場合、リターンも低いので、掛金を大きく増やすことは期待できません。
1-4 手数料がかかる
iDeCo(イデコ)に加入するときや商品を運用するときなどに手数料がかかります。
iDeCo(イデコ)を開始するには、銀行や証券会社などiDeCo(イデコ)を取り扱う金融機関(運営管理機関)で、専用口座を開設する必要がありますが、開設には加入・移換時手数料がかかります。
さらに、口座を維持させるために加入者手数料(国民年金基金連合会に払う手数料)や運営管理手数料(金融機関に払う手数料で無料の場合もある)などを毎月支払わなければいけません。
金融機関によっては、毎月の運営管理手数料や加入者手数料に、各社で設定した手数料を上乗せしているところもあります。
手数料が運用利回りを上回ってしまうこともあるので注意が必要です。
1-5 職業別に掛金の上限がある
iDeCo(イデコ)では毎月支払う掛金の金額に、職業別の上限があります。
参考:iDeCo公式サイト iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等
通常の会社員の看護師であれば月額2万3,000円、年額27万6,000円までしか積み立てることができません。
資金に余裕があり、高額の掛金で投資をしたい人にとっては、上限がデメリットともいえるでしょう。
1-6 年金を受け取るときに課税される場合がある
受取時、自分で積み立てた資金なのに課税対象となってしまう場合があります。
iDeCo(イデコ)のメリットは、掛金支払時、運用時、受取時の3つの局面全てにおいて税制優遇が備わっていることでした。
しかしながら、受取時だけは、その方法によって課税対象となってしまうケースがあるのです。
受け取る金額だけでなく、タイミングによっても税金が増えることがあるので、出口のシミュレーションをしっかりしておく必要があるでしょう。
2 iDeCo(イデコ)に「あまり向いていない人」「向いている人」
ここまでの内容から、iDeCo(イデコ)に「あまり向いていない人」「向いている人」をまとめました。
2-1 あまり向いていない人
iDeCo(イデコ)にあまり向いていない人は次のような人です。
いざというときに使える貯金が少ない人
iDeCo(イデコ)は途中で解約したり、引き出したりすることができません。
そのため、いざというときに使うための貯金が十分でない状態で始めるのはおすすめできません。
不測の事態が起こった場合、手元の現金が足りなくなってしまうおそれがあるからです。
収入額が安定していない人
残業代などに左右されて収入が大きく変動する人は、収入が少ない時期に掛金を支払えなくなるおそれがあります。
また、近いうちに転職や働き方を変える予定がある人も同様です。収入が安定するまでは、iDeCo(イデコ)の開始は避けたほうがいいでしょう。
あまり税金を払っていない人
iDeCo(イデコ)の最大のメリットは、掛金が全額所得控除の対象になることです。
そもそも所得税や住民税をほとんど納めていない人は、このメリットを十分に活用することができません。
住宅ローン控除などを活用している人も、所得控除のメリットを受けられるか十分に検討する必要があるでしょう。
2-2 向いている人
iDeCo(イデコ)に向いている人は次のような人です。
安定的に収入を得ている
iDeCo(イデコ)の最大のメリットは、掛金全額が所得控除の対象になることです。
また、日本の所得税は累進課税であるため、高収入の人ほど税率が高くなる仕組みです。比較的高い収入を得られる看護師は、このメリットを効果的に得ることができるでしょう。
安定的に収入を得ている人であれば、資金不足に陥るリスクも少ないので、積極的にiDeCo(イデコ)を活用することもできますね。
退職金がないか、少ない見込みの人
退職金がない人や少ない見込みの人は、iDeCo(イデコ)を一時金として受け取った際の税金がかからなくなる可能性が高いので、メリットを受けやすいといえるでしょう。
また、浪費グセがあり、少しお金が貯まると使ってしまう人などにとっては、途中で引き出せないことが大きなメリットとなります。
確実に老後資金を作りたい人は、iDeCo(イデコ)を検討してみましょう。
40代くらいまでの比較的若い世代の人
iDeCo(イデコ)のような積立投資には、時間を味方につけた運用ができるというメリットがあります。
60歳までにまとまった時間がある比較的若い世代であれば、そのメリットも得やすいです。
3 まとめ:意見と提案
iDeCo(イデコ)は、個人で拠出した資金を運用して資産形成を行う個人型確定拠出年金として設計された制度です。
原則として60歳までは掛金を引き出せないことが最大のデメリットとなるでしょう。
この長期間の資産拘束により、加入を躊躇する方も少なくありません。
一方で、iDeCo(イデコ)は掛金の全額所得控除や運用益が非課税になるなど、税制面では非常に優遇されていますよね。
生活を圧迫するほどの無理な投資にならないよう、計画的な投資を心掛ければ、老後資金増額の心強い味方となるでしょう。
デメリットもしっかりと理解した上で、賢く利用したいものですね。