看護師の退職金、相場はどれくらい?勤続年数と職場別の支給実態

退職金相場

「看護師の退職金制度について知りたい!」

「何年目くらいからどのくらい支給されるの?」

それぞれの医療機関において仕事をしながら、このような疑問をお持ちの看護師の方も多いのではないでしょうか。

職場によって退職金制度の「有無」自体が異なることはご存じですか?

また、ひとえに退職金制度といっても、いくつか種類があったり、何年目からもらえるか、いくらもらえるか、いつもらえるかについても違いがあるのです。

まず、看護師の退職金は、次のような点がポイントになります。

看護師の退職金のポイント
  • 退職金の主な種類は「退職一時金制度」「企業年金制度」「前払い制度」
  • 看護師の退職金は勤続年数と職場によって異なる
  • 看護師の退職金を増やす方法もある

本記事は、転職や退職を検討していて、退職金に関する疑問をお持ちの看護師の方に役立つ内容となっています。

それではさっそく見ていきましょう。

1 看護師の退職金事情:そもそも退職金は支給されるの?

うぇるび
うぇるび

そもそも看護師という仕事は、職場を退職する際に退職金をもらえるのでしょうか?

1-1 退職金制度の導入は会社の義務ではない

看護師に限った話ではなく、退職金制度自体は、法律などによって義務化されているわけではありません

言い換えれば、法律上、退職金制度を導入する義務はなく、会社で退職金制度を設けていなければ、退職金を支給されません。

逆に、退職金制度が就業規則などで明確に設けられている場合には、原則として労働基準法等の適用を受けて支給義務が発生します。

なお、会社が退職金制度を導入している場合は、同法上「就業規則で金額・支払方法を明記する」よう定められています。この就業規則は、従業員が「いつでも見られるようにしておかなければならない」とも定められています。

勤務先で退職金制度導入されているかどうかを確認する場合には、まず就業規則をチェックしましょう。

うぇるび
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あくまでも会社単位で決められているので、退職金がもらえるかどうかは「勤務先による」というのが結論です。

1-2 小規模病院やクリニックは退職金制度がないことも

大規模な医療機関であれば、しっかりとした退職金制度が導入されている可能性が高いです。

一方で、クリニックのような小規模な個人経営の病院や介護関連施設などでは退職金制度がない職場も多いようです。

厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」をさらっと見てみましょう。

  • 退職金制度(一時金・年金)のある企業は74.9%
    • 医療・福祉関係企業は75.5%
  • 企業規模別にみると
    •  「1,000人以上」が90.1%
    •  「300~999人」が88.8%
    •  「100~299人」が84.7%
    •  「30~99人」が70.1%

4分の1の割合で退職金制度を導入していない会社があり、従業員数が少なくなるほど支給率が下がっていることが分かります。

従業員数の規模が小さい会社の場合は就業規則などを確認しておくのがよいでしょう。

退職金制度の有無は、特に定年退職後の安定した生活を保障する重要な要素と言えます。

したがって、転職する場合には、可能な限り、応募する前に退職金制度を確認することをおすすめします。

2 看護師の退職金制度の種類:どんな形式で支給されるの?

退職金制度の導入は会社によって異なることが分かったら、今度は看護師の退職金制度の種類について見ていきましょう。

退職金の一般的な種類について見ていきますが、職場によって支給ルール自体は異なります。

2-1 退職一時金制度

退職一時金制度とは、退職時に退職金が一括で支給される制度のことです。

退職金と言えば、この一時金として支給を受けるのが一般的です。

前出の厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によれば、次のとおりです。

  • 退職金制度のある医療・福祉関係企業のうち
    • 98.3%が退職一時金制度を採用
  • 退職一時金制度のみを導入している企業は86.9%

退職金制度の中で最も一般的な制度であることが分かりますね。

実際に支給される退職金の金額は、退職時の勤続年数、最終給与、役職、保持している資格、会社への貢献度などによって支給基準が定められているのが一般的です。

なお、会社都合退職か自己都合退職かによっても、支給される金額が異なる場合があります。この場合、当然自己都合退職よりも会社都合退職のほうが支給金額は高くなります

退職・転職の予定のある方は、就業規則などで退職金の計算式をチェックしておき、退職理由による金額の違いを試算しておくのもよいでしょう。

2-2 企業年金制度

企業年金制度も退職金制度のひとつであり、従業員の老後の生活をより豊かにするために、積み立てた資金を運用して、従業員の退職時に年金として給付します。

企業によっては、従業員が掛金を上乗せすることもできます。給付のきまりは「年金規約」に定められています。

前出の厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によれば次のとおりです。

  • 退職金制度のある医療・福祉関係企業の13.1%が企業年金制度を採用
  • 企業年金制度のみを採用している企業はわずか1.7%

先ほどの退職一時金制度と比較すると、企業年金はかなりの少数派と言えるでしょう。

2-3 前払い制度

「前払い制度」を採用している企業もあります。この制度の場合、退職金は現役で働いている期間に、あらかじめ決められた金額が給与・賞与に上乗せして支払われる仕組みです。

つまり、「毎月の給与に退職金が含まれている」ことになるので、常に計画的に老後資金を貯める必要があるわけです。

基本給が高く設定されている場合は前払い制度を採用している可能性が高く、退職時の一時支給や老後の定期支給が無いので注意しましょう。

近年は投資に取り組む人が増えていますが、自分で投資商品を選んで老後資金を確保したいと考えている人にとっては、魅力的なシステムと言えるでしょう。

3 看護師の退職金と勤続年数:いくら支給されるの?

一般的に、退職金は「〇年以上勤めた場合には〇〇円支給される」という基準になっています。

今度は、看護師の勤続年数による退職金の支給額の目安を見ていきましょう。

3-1 勤続3年程度の看護師の退職金は30万円程度

3年目で退職をした場合の看護師の退職金の目安は30万円程度となっています。なお、3年以内に退職した場合には支給されないこともあります。

退職金が支給されるとしても、その後の生活費のあてなどにはせず、転職先を見つけるまでの繋ぎという感覚で考えておくと良いですね。

3-2 勤続5年以上の看護師の退職金は30万円~100万円

勤続年数5年以上での退職になると、勤務先の規模にもよりますが、30万円から100万円程度の退職金が支給されることが多いようです。

100万円近い金額が支給されれば、生活費の数か月分に相当するので、使い方をしっかり計画してじっくりと転職活動などに専念することもできそうですね。

3-3 勤続10年以上の看護師の退職金は250万円~300万円

勤続10年目からは、250~300万円程度の退職金の支給が見込めそうです。

勤続年数が長いほど高額支給となる仕組みですが、勤続年数10年で一気に金額がアップしていることが分かりますね。

看護師の10年目にもなると、30代前半~中盤となり、結婚や出産などを迎える時期となる人も多くなります。

退職後家庭に入る場合も、転職して新しい道を探す場合も、退職金を活かすことで様々な選択肢がありそうですね。その後の人生設計を立てながら計画的に使うことが望ましいでしょう。

3-4 勤続20年以上の看護師の退職金は450万円~600万円

勤続20年目以上ともなると、450~600万円程度の退職金支給が見込めそうです。

看護師として20年以上も勤めると、40代に突入し、年齢的にも転職を狙えるラストチャンスになるかもしれません。

転職せずに一足早くリタイアしてのんびり過ごすという選択をする方も多いことでしょう。

数百万円のお金の使い道は慎重に検討したいところですね。

以下の記事で、退職金などのまとまった額のお金の使い道について詳しく解説していますので、ぜひあわせてお読みください。

4 職場・職種別の看護師の退職金の平均相場

看護師の退職金は、勤める職場によっても大きく異なります。

国立病院・公立病院・私立病院の相場をそれぞれ見てみましょう。

4-1 国立病院・公立病院で定年退職した場合

国立病院に勤務する看護師が定年退職した場合、

  • 退職金の相場は約1,800万円程度

役職に就いていた場合は2,000万円以上も望めるので、非常に手厚い額が支払われると言えるでしょう。

公立病院に勤務する看護師が定年退職すし場合、

  • 都道府県立で1,400万円
  • 政令指定都市で1,900万円
  • 政令指定都市以外の市町村立で1,800万円

が相場となっています。

県立病院や市立病院に勤務する看護師は地方公務員の身分を有するので、退職金は「地方公務員法」に基づいて支給され、金額は自治体によって異なります。

4-2 私立病院で定年退職した場合

私立病院に勤務する看護師の場合、退職金の相場は約800万円~2,000万円程度と幅があります。

運営状況や施設規模、運営方針によって大きな差があるので、かなり金額に差が出てしまうのです。

退職金制度の有無だけでなく病院の経営についても調べておくことで、自身の退職後の生活に安心感をもたらしてくれるでしょう。

5 まとめ:意見と提案

冒頭でお話したように、退職金を支払うのは雇用側の義務ではありません。そのため、退職金制度がない医療機関もあります。

一般的に国公立病院や規模の大きな医療機関は、退職金制度が整っている傾向が高いです。しかし、個人経営の病院や小規模クリニック、介護施設などでは退職金制度がないことも珍しくありません。

退職金は離職後や定年退職後の生活を安定させるための重要なものだと思います。

支給の有無も、職場を選定する上で大変重要な要素となってきますよね。

退職金制度の有無は、就業規則や給与規定を確認することでわかります。もし、就業規則や給与規定に退職金に関する記載がなければ、退職金は無いと考えてよいでしょう。

就職や転職をする場合は、就業規則や給与規定を見て退職金制度の有無を確認しておきましょう。

皆さんにとって本当に働きやすい職場が見つかることを祈っています。

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